数字と数詞

 独立後のヒンディー語の文章では、基本的に英語で使われているものと同じ数字が使用される。だが、ヒンディー語独自の書体もあり、特に独立前に出版された書籍ではこちらが使われることが多い。

 ヒンディー語の数詞の読み方は難しい。一応法則はあるにはあるのだが、それらを覚えるより、0から99までの読み方を丸暗記した方が早い。また、100以上の大きな単位の数字では、インド独自の区切りがあり、注意が必要である。

 1~31までの数字は、日付を示すときに使うので特に覚えておくべき。それ以降の数字の中では、5の倍数の数字がよく出て来る。それに、自分の年齢、生年月日、現在の西暦などに出て来る数字もよく使う。一度に全てを覚えるのは大変だが、とりあえずこれらだけでも覚えておけば、会話には困らないだろう。

数字

 インド憲法第343条第1項にインドの公用数字の規定がある。

The form of numerals to be used for the official purposes of the Union shall be the international form of Indian numerals.

インド連邦の公用数字はインド数字の国際形と定める。

 「インド数字の国際形」とはつまり、世界中で使われている一般的な数字のことである。すなわち、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 0のことだ。これらの数字の起源がインドであることを考慮した書き方である。インドでも一般的にこれらの数字が使われている。普通の日本人には、これらの数字の読解に関しては何の問題もないはずである。

 だが、ヒンディー語には独自の書体の数字があり、こちらもよく使用されるので、ヒンディー語学習者は覚えておく必要がある。PC上で表示されるのは、以下の書体になる。

१, २, ३, ४, ५, ६, ७, ८, ९, ०

 これら以外にも、ヒンディー語の書籍や文章を読んでいると、フォントや活字の関係で、別の形の数字が出て来るので注意。中には全く違って見えるものもある。以下、対応表を作っておいた。

1
2
3
4
5
6
7
8
9
0

数詞(99まで)

 ヒンディー語の数詞は0から99まで丸暗記を要する。

0 शून्य シューンニャ shūny
1 एक エーク ek 詩の中ではयक, इक などという形でも書かれる。「エク」と読むのが正しい。
2 दो ドー do 東部方言のदुई(ドゥイー)という言い方もよく聞く。
3 तीन ティーン tīn
4 चार チャール chār
5 पाँच パー(ン)チ pānch
6 छः/छह チャェ chhae
7 सात サート sāt
8 आठ アート āth
9 नौ ナォ nau
10 दस ダス das
11 ग्यारह ギャーラェ gyārae
12 बारह バーラェ bārae
13 तेरह テーラェ terae
14 चौदह チャォダェ chaudae
15 पंद्रह パンドラェ pandrae
16 सोलह ソーラェ solae
17 सत्रह サットラェ sattrae
18 अठारह アターラェ athārae
19 उन्नीस ウンニース unnīs
20 बीस ビース bīs
21 इक्कीस イッキース ikkīs
22 बाईस バーイース bāīs
23 तेईस テーイース teīs
24 चौबीस チャォビース chaubīs
25 पच्चीस パッチース pachchīs
26 छब्बीस チャッビース chhabbīs
27 सत्ताईस サッターイース sattāīs
28 अट्ठाईस アッターイース atthāīs
29 उनतीस ウンティース untīs उनत्तीस(ウナッティース)という言い方もある。
30 तीस ティース tīs
31 इकतीस イクティース iktīs इकत्तीस(イカッティース)という言い方もある。
32 बत्तीस バッティース battīs
33 तैंतीस タェンティース taintīs
34 चौंतीस チャォンティース chauntīs
35 पैंतीस パェンティース paintīs
36 छत्तीस チャッティース chhattīs
37 सैंतीस サェンティース saintīs
38 अड़तीस アルティース artīs
39 उनतालीस ウンターリース untālīs
40 चालीस チャーリース chālīs
41 इकतालीस イクターリース iktālīs
42 बयालीस バヤーリース bayālīs
43 तैंतालीस タェンターリース taintālīs
44 चवालीस チャワーリース chawālīs
45 पैंतालीस パェンターリース paintālīs
46 छियालीस チヤーリース chhiyālīs
47 सैंतालीस サェンターリース saintālīs
48 अड़तालीस アルターリース artālīs
49 उनचास ウンチャース unchās
50 पचास パチャース pachās
51 इक्यावन イッキャーワン ikyāwan
52 बावन バーワン bāwan
53 तिरपन ティルパン tirpan
54 चौवन チャォワン chauwan
55 पचपन パチュパン pachpan
56 छप्पन チャッパン chhappan
57 सत्तावन サッターワン sattāwan
58 अट्ठावन アッターワン atthāwan
59 उनसठ ウンサト unsath
60 साठ サート sāth
61 इकसठ イクサト iksath
62 बासठ バーサト bāsath
63 तिरसठ ティルサト tirsath
64 चौंसठ チャォ(ン)サト chaunsath
65 पैंसठ パェ(ン)サト painsath
66 छियासठ チヤーサト chhiyāsath
67 सड़सठ サルサト sarsath
68 अड़सठ アルサト sarsath
69 उनहत्तर ウンハッタル unhattar
70 सत्तर サッタル sattar
71 इकहत्तर イクハッタル ikhattar
72 बहत्तर バハッタル bahattar
73 तिरहत्तर ティルハッタル tirhattar
74 चौहत्तर チャォハッタル chauhattar
75 पचहत्तर パチュハッタル pachhattar
76 छिहत्तर チハッタル chhihattar
77 सतहत्तर サトハッタル sathattar
78 अठहत्तर アトハッタル athhattar
79 उनासी ウナースィー unāsī
80 अस्सी アッスィー assī
81 इक्यासी イッキャースィー ikkyāsī
82 बयासी バヤースィー bayāsī
83 तिरासी ティラースィー tirāsī
84 चौरासी チャォラースィー chaurāsī
85 पचासी パチャースィー pachāsī
86 छियासी チヤースィー chhiyāsī
87 सतासी サタースィー satāsī
88 अठासी アタースィー athāsī
89 नवासी ナワースィー nawāsī
90 नब्बे ナッベー nabbe
91 इक्यानवे イキャーンヴェー ikkyānve
92 बानवे バーンヴェー bānve
93 तिरानवे ティラーンヴェー tirānve
94 चौरानवे チャォラーンヴェー chaurānve
95 पचानवे パチャーンヴェー pachānve
96 छियानवे チヤーンヴェー chhiyānve
97 सत्तानवे サッターンヴェー sattānve
98 अट्ठानवे アッターンヴェー atthānve
99 निन्यानवे ニニャーンヴェー ninyānve

数詞(100以上)

 ヒンディー語では、桁の区切り方が日本語や英語とは異なる。百、千までは一桁ずつ数詞があるが、それより上の数は、二桁ずつ数詞が用意されている。それに合わせ、インドではコンマの付け方が国際標準とは異なるときがあるので注意。

सौ サォ sau 100。百。
हज़ार ハザール hazār 1,000。千。
लाख ラーク lākh 100,000。十万。
करोड़ カロール karor 10,000,000。千万。
अरब アラブ arab 1,000,000,000。十億。

 以下、日本語、英語、ヒンディー語の数詞(100以上)の対応表。

数字(国際標準) 日本語 英語 ヒンディー語 数字(インド標準)
100 hundred सौ 100
1,000 thousand हज़ार 1,000
10,000 (ten thousand) (दस हज़ार) 10,000
100,000 (十万) (hundred thousand) लाख 1,00,000
1,000,000 (百万) million (दस लाख) 10,00,000
10,000,000 (千万) ten million करोड़ 1,00,00,000
100,000,000 hundred million (दस करोड़) 10,00,00,000
1,000,000,000 (十億) billion अरब 1,00,00,00,000

 1~99までの数詞と、百、千、十万、千万、十億を示す数詞を組み合わせれば、990億までの数字が言い表すことができる。例えば、12億3456万7890は、ヒンディー語では、एक अरब तेईस करोड़ पैंतालीस लाख सड़सठ हज़ार आठ सौ नब्बे になる。

 ただし、हज़ार を使わずに、二桁の数字と सौ を組み合わせて千の桁までの数字を言い表すことができる。例えば、1,200という数字は एक हज़ार दो सौ と言ってもいいし、बारह सौ と言ってもいい。

 西暦を言うときは、1000年~1099年、2000年~2099年は हज़ार を使った言い方が普通で、それ以外の年は सौ を使った言い方が普通である。

1857年 अठारह सौ सत्तावन
1947年 उन्नीस सौ सैंतालीस
2001年 दो हज़ार एक
2010年 दो हज़ार दस

 ちなみに、ヒンディー語の十万、千万の数詞は英語にも取り込まれており、インドの英字新聞ではよく出て来る単語となっている。十万は「lakh」、千万は「crore」になる。

特殊な数詞

 ヒンディー語には、1.5、2.5を示す特殊な数詞や、形容する数字の桁の1/2や1/4の数を足したり引いたりする特殊な「数形容詞」がある。

डेढ़ デール derh 1.5。
ढाई ダーイー dhāī 2.5。
साढ़े サーレー sārhe 桁の1/2を足す。
सवा サワー sawā 桁の1/4を足す。
पौने パォネー paune 桁の1/4を引く。

 例えば以下の数字は、上の特殊な数詞や数形容詞を使って読まれることが多い。

基本的な数詞を使った読み方 特殊な数詞・数形容詞を使った読み方
125 एक सौ पच्चीस सवा एक सौ
150 एक सौ पचास डेढ़ सौ
175 एक सौ पचहत्तर पौने दो सौ
250 दो सौ पचास ढाई सौ
350 तीन सौ पचास साढ़े तीन सौ

 डेढ़ と ढाई という数詞があるため、これらが使える場所では通常は साढ़े は使われない。つまり、150のために साढ़े सौ と言ったり、250のために साढ़े दो सौ と言ったりはしない。

 これらの特殊な数詞・数形容詞に加え、「半分」という意味の形容詞「आधा」も、数を示すときによく使われる。ただし、「आधा」には、形容する数字の桁の数分の一の数を足したり引いたりするような数形容詞的な使い方はなく、単に形容する数を半分にするだけである。

 これらの特殊な数詞・数形容詞は、度量衡単位と共に使われることも多い。例えば重量単位kg。インドでは「के.जी.(ケー・ジー)」と読まれる。言うまでもなく、1kg = 1,000gである。kgと以上の特殊な数詞・数形容詞を使って数を示すと、以下のようになる。

आधा के.जी. 500g
पौने के.जी. 750g
सवा के.जी. 1,250g
डेढ़ के.जी. 1,500g
पौने दो के.जी. 1,750g
ढाई के.जी. 2,500g
साढ़े तीन के.जी. 3,500kg

時刻

 1時、2時、3時など、1時間単位の時刻を示すときは、数詞の後に बजे を加えればよい。1時はएक बजे、2時は दो बजे、3時は तीन बजे になる。

 15分単位の時刻の示し方は、上で説明した डेढ़, ढाई, सवा, साढ़े, पौने が使用される。1時から4時までのヒンディー語の時刻の言い方は以下の通り。

1時 एक बजे
1時15分 सवा एक बजे
1時半 डेढ़ बजे
1時45分 पौने दो बजे
2時 दो बजे
2時15分 सवा दो बजे
2時半 ढाई बजे
2時45分 पौने तीन बजे
3時 तीन बजे
3時15分 सवा तीन बजे
3時半 साढ़े तीन बजे
3時45分 पौने चार बजे
4時 चार बजे

 1時23分のように、もっと細かい時刻を示したいときは、~ बजकर ~ मिनट という表現が使われる。1時23分は、एक बजकर तेईस मिनट になる。ただし、口語では単に एक तेईस のように数字を並べて時刻を示すときもある。インド人はあまりそこまで細かい時刻を求めていないことが多く、細かくても15分単位の時刻で済ますことがほとんどである。

序数詞

 序数とは、第一の、第二の、とか、一番目の、二番目の、というような、順番を示す数のことである。1~9までの序数詞は以下の通りである。「第一の」という意味の पहला と、「第二の」という意味の दूसरा には、序数的な意味の他に、それから派生した別の意味もあり、ヒンディー語の文章ではよく使われるので注意。

पहला パェヘラー pehlā 第一の、最初の。
दूसरा ドゥースラー dūsrā 第二の、他の。
तीसरा ティースラー tīsrā 第三の。
चौथा チャォター chauthā 第四の。
पाँचवाँ パー(ン)チワー(ン) pānchwān 第五の。
छठा チャター chhathā 第六の。
सातवाँ サートワー(ン) sātwān 第七の。
आठवाँ アートワー(ン) āthwān 第八の。
नवाँ ナワー(ン) nawān 第九の。नौवाँ(ナォワー(ン))とも。

 5, 7, 8は、通常の数詞の語尾に-वाँ を追加しただけであることが分かる。10以上の序数詞は全て、通常の数詞の語尾に-वाँ を追加する。序数詞は世紀を示すときにも使われるので、参考までに21までの序数詞を挙げておく。

दसवाँ ダスワー(ン) daswān 第十の。
ग्यारहवाँ ギャーラェワー(ン) gyāraewān 第十一の。
बारहवाँ バーラェワー(ン) bāraewān 第十二の。
तेरहवाँ テーラェワー(ン) teraewān 第十三の。
चौदहवाँ チャォダェワー(ン) chaudaewān 第十四の。
पंद्रहवाँ パンドラワー(ン) pandraewān 第十五の。
सोलहवाँ ソーラェワー(ン) solaewān 第十六の。
सत्रहवाँ サットラェワー(ン) sattraewān 第十七の。
अठारहवाँ アターラェワー(ン) athhāraewān 第十八の。
उन्नीसवाँ ウンニースワー(ン) unnīswān 第十九の。
बीसवाँ ビースワー(ン) bīswān 第二十の。
इक्कीसवाँ イッキースワー(ン) ikkīswān 第二十一の。

 序数詞の語尾は形容詞変化(後述)する。「世紀」という意味の単語は、सदी または शताब्दी で、どちらも女性名詞。よって、世紀を示すときは、序数詞は女性形になる。「21世紀」は इक्कीसवीं सदी または इक्कीसवीं शताब्दी になる。

 以上の序数詞が一般的に使われるものだが、ヒンディー語では厄介なことに、これらの他にも、サンスクリット語系、ペルシア語系、アラビア語系の序数詞が使われることがある。参考までに以下にまとめておいた。

ヒンディー語 サンスクリット語 ペルシア語 アラビア語
पहला प्रथम यकुम अव्वल
दूसरा द्वितीय दुवुम सानी
तीसरा तृतीय सिवुम सालस
चौथा चतुर्थ चहारुम राबिअ
पाँचवाँ पँचम पंजुम ख़ामिस
छठा षष्ठ शशुम सादिस
सातवाँ सप्तम हफ़्तुम साबिअ
आठवाँ अष्टम हश्तम सामिन
नवाँ नवम नुहुम तासिअ
दसवाँ दशम दहुम आशिर

その他

 ヒンディー語の数字には、数以外の意味が含まれているものもある。

数字 意味 理由
11 徒歩 見ての通り、足2本に見えるため。
36 不仲 ३ と ६ がお互いに背を向け合っているように見えるため。
64 常に 日本語の四六時中と同じ。
84 生類全て 生類の数が840万とされるため。輪廻転生も意味する。
420 詐欺師 インド刑法(IPC)第420条が詐欺罪に関する規定のため。

 ओ३म् と書かれているのを時々見かけるが、真ん中の文字は母音字「उ」ではなく、ヒンディー語数字の「३」である。これは、「ओ」の音を3倍に伸ばして発音することを示している。敢えてカタカナで表せば「オーーーム」になる。