昔々のお話よ。今のブラフマー様はお顔が四つあるけど、まだお顔がひとつしかなかった頃のことなのよ。ブラフマー様はその時独身で、一人でいることに自己満足していたんですって。でも、愛の神様であるカーマ様に矢を射かけられたの。カーマ様の矢に当たると誰でも必ず恋に落ちちゃうって噂だけど、さすがのブラフマー様もやっぱりそうなっちゃったのよ。で、独身でいることに耐えられなくなって、どうしても奥さんが欲しくなっちゃったの。
普通の人だったら、好みのお相手を一生懸命探すところだけど、ブラフマー様は違うの。なんと自分の身体から美しい女神様を創り出したんですって！ブラフマー様は創造神だから、何でもできるのね！でもちょっと反則のような・・・。で、その女神様がサラスヴァティー様なの。サラスヴァティー様はあまりに美しかったから、ブラフマー様はいつでも見ていたいって思うようになったんですって！フォール・イン・ラヴって奴ね！でも、サラスヴァティー様は恥ずかしがり屋さんだったから、ブラフマー様の視線からなんとか逃げようとしたんですって！
最初、サラスヴァティー様は雌牛に化けて逃げたんだけど、ブラフマー様は雄牛になって追っかけたの。それからサラスヴァティー様が雌馬になると、ブラフマー様は雄馬に、雌ガチョウになると雄ガチョウに、雌鹿になると雄鹿に化けて、とことんまで追いかけたの。これはもうストーカーよねぇ。その後も二人は小さな昆虫から大きな哺乳類まで、いろんな動物になって追いかけっこしたから、この時にいろんな動物が創造されたんですって。
逃げるサラスヴァティー様をブラフマー様はなかなか捕まえることができなかったから、今度は頭の数を増やして捜すことにしたの。サラスヴァティー様が隠れる度にブラフマー様は新しい頭を生やして、ブラフマー様のお顔は４つになってしまったの。これでブラフマー様は東西南北一度に見ることが出来るようになってしまって、サラスヴァティー様は四方のどこにも隠れることができなくなってしまったの。そこで、サラスヴァティー様は上のほう、つまり天空に逃げたんだけど、やっぱりブラフマー様に新しい上向きのお顔が生えてきて、見つかってしまったんですって。でもどうしてもブラフマー様はサラスヴァティー様の心を振り向かせることが出来なかったの。つまり振られちゃったわけね。
その時、ブラフマー様のその激しい性欲を見て、シヴァ様が、その性欲を抑えるために、ブラフマー様の頭をひとつもぎとってしまったの。これによってブラフマー様は熱恋の魔法から解き放たれて冷静になったのね。サラスヴァティー様は冷静になったブラフマー様を見て、これなら大丈夫って思って結婚することにしたの。
ご結婚後は、お二人でどこか秘密の場所にひきこもって、１００年間出てこなかったんですって！まぁ、何をしてらしたのかしら？そして、めでたく人類の祖先、マヌが誕生したのよ。あら、恋愛のお話をしてるつもりが、ブラフマー様の創世のお話にまでなってしまいましたわ。私のお話を聞いてわかったでしょ？ブラフマー様は全ての人類のお父様なのよ。あなたも毎日感謝のお祈りをしてね。 |
