ブラフマー様には顔が4つあるが、これはまだ1つしか顔がなかった頃の話だ。つっても顔は1つあれば十分だがな。
ブラフマー様はある時、自分の体内から美しい女神を作り出したんだ。どうやって作り出したかは俺には聞かないでくれ。分かるはずがねぇ。自分好みの女を自分で作れたら、こんなにいいことはねぇな。で、ブラフマー様はその女神があまりに美しかったもんだから、すっかりメロメロになっちまって、いつでも見ていたくなっちまったんだ。その女神ってのが、この村の北東に住んでるサラスヴァティー様だ。今じゃ、がめついオバタリアンになっちまったが、・・・おっと、俺がこんなこと言ってたなんて、誰にも言わないでくれよ、とにかくサラスヴァティー様はその時、とても恥かしがり屋で、ブラフマー様の視線の届かないところへ隠れようとしたんだ。
まず、サラスヴァティー様はブラフマー様の右の方へ隠れたんだ。ところが、ブラフマー様に右向きの顔が生えてきたんだ。今度は左に回ると、同じように左向きの顔が生えてきた。後ろに回ると、やっぱり後ろ向きの顔が生えてきたんだ。これでブラフマー様の顔は4つになって、四方に視線が届くようになっちまったんだ。その瞬間に立ち会えなかったことを俺は光栄に思うぜ。さぞや気持ち悪いだろうな。サラスヴァティー様はいつも視線を向けられることに耐えられなくなって、今度は視線の届かない空中に逃げたんだ。ところがどっこい、ブラフマー様に上向きの5つ目の顔が生えてきたんだ。なんてこった。そんでもって、もはやブラフマー様から逃げられないことを悟ったサラスヴァティー様は、あきらめてブラフマー様と結婚したんだ。
ま、惚れた女がいたら、とことんまで追い詰めろってことだな。押して押して押しまくれと。それがこの話の教訓だ。でも、これを実践して警察に捕まった奴もいたから、あんたも気をつけなよ。・・・そうそう、そういえば、この話じゃブラフマー様の顔は5つあることになるけど、今は4つしかないよな。なんでかなんて俺に聞かないでくれよ。俺はさすらいの恋愛取扱士。ラヴのことしか分からねぇのさ。じゃあな。 |