インド神話のお約束 |
インド神話をいくつか読んでいると、その登場人物たちが生きている世界には一貫していくつかの決まりごとがあるように思われます。
1つは『一度口にしたことは必ず実行する。』です。神様も人間も悪魔も、自分で言ったことは自分で責任を持って成し遂げますし、他人に対して呪いの言葉を発したりすると、それが必ず効力を持つかのように考えられているように思われます。日本でも言葉は「言霊(ことだま)」と呼ばれて、霊的なものを持っていると考えられたそうですが、インドでもその傾向が顕著のようです。『リグ・ヴェーダ』などのインドの聖典は口伝でしたし、文字にされたものにはあまり高い価値を見出していなかったようです。逆に言えば、現在文字化されて残っている文献があるということは、その文献が書かれた当時というのは、文字化しないと口伝では後世に残っていかない可能性があるほど、人々の学習能力が衰えた時代になっていたことを示しているのかもしれません。
2つめは、『苦行をすれば願いは必ず叶う』です。こちらも、例え神様であっても人間であっても悪魔であっても、長い間(時には何百年、何千年も)苦行を続ければ必ずそこにブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌなどの偉い神様が現れて、どんな願いでも叶えてくれます。この制度(?)のおかげでしばしば悪魔が苦行を行って強大な力を身につけてしまい、神様たちに災難が降りかかるという間抜けな事態が起こります。
3つめは『苦行では不死身にはなれない』ということです。苦行をすればどんな願いでも叶うのですが、唯一不老不死の身体だけは手に入らなくなっています。条件付きの不死身(例えば「女性にしか殺せない」など)なら可能ですが、そうやって不死身になった者もその条件によって結局殺されてしまいます。神様たちは霊水アムリタを飲んでいるために不死身のようです。また、なぜかハヌマーンやガルーダなど、動物神に限っては、神様から不死身の身体を授かったエピソードがあるような気がします。