昔、ターラカという悪魔が苦行によって強大な力を持ったときがあったんだ。ターラカはブラフマー様から「シヴァの息子以外には殺されない」という身体を約束された。この頃のシヴァ様は、前の奥さんのサティー様を失ったばかりで苦行生活に入っていて、当分再婚する気配がなかったからだ。世界はターラカによって征服され、神々はターラカの命令に従わなくてはならなくなっちまった。
そこで神々は何とかシヴァに再婚するようにして、サティー様の生まれ変わりを出現させたんだ。それがパールヴァティー様ってわけさ。パールヴァティー様は年頃になるとシヴァ様の元へ行ったんだが、シヴァ様は深い瞑想をしていて、パールヴァティー様に目もくれなかった。そればかりか、パールヴァティー様の肌が黒いことをあざ笑ったんだ。パールヴァティー様はショックを受けたが、それでもシヴァ様の気を引くために苦行をしたんだ。その姿を見たブラフマー様が、パールヴァティー様の肌を黄金色に変えたんだが、それでもシヴァ様の心を動かすことができなかった。
これではシヴァ様の息子が生まれなくて、ターラカによる支配を終わらせることができない。そこで神々は愛の神カーマをシヴァ様のもとへと向かわせたんだ。カーマ様の弓矢に当たったら、どんな者でも愛欲をかきたてられるって話だ。カーマ様はシヴァ様のもとへと飛んでいって、シヴァ様がパールヴァティー様に恋をするように念じて愛の矢を放ったんだ。矢はシヴァ様に見事に当たり、シヴァ様はパールヴァティー様に欲望を感じるようになったんだが、同時に急にそうなったことを不審に思って辺りを見回してみたんだ。すると、木の陰にカーマ様の姿を見つけた。全てを悟ったシヴァ様は、苦行の邪魔をされたことを怒って、第三の眼から光線を発してカーマ様を灰にしてしまったんだ。
カーマ様によって欲望に目覚めたシヴァ様だけど、それでも偉大な意思の力で感情に負けることはなく、苦行を止めようとしなかったんだ。パールヴァティー様の方も諦めずに、最後の手段としてシヴァ様の心を苦行によって得ようと考えたんだ。パールヴァティー様は何も食べず、氷のような水の上に横たわり、自分の肉体をいじめたんだ。
ある日、パールヴァティー様が激しい苦行を行っているところに、一人のバラモンが来て尋ねたんだ。「なぜ、美しい肉体をそのように自ら傷つけるのですか?」ってな。パールヴァティー様が「シヴァと結婚したいからです。」と答えると、バラモンは笑って、「あんな、家もなく墓場に住んでいる汚れた陰険な乞食のどこがいいんだ?」ってさんざんシヴァ様を侮辱したんだ。でも、パールヴァティー様は「それでも私はシヴァと結婚したいのです。」と苦行を止めようとしなかったんだ。すると、そのバラモンはシヴァ様の姿になったんだ。なんとこのバラモンはシヴァ様がパールヴァティー様の心を試すために化けた姿だったんだな。パールヴァティー様の愛を確かめたシヴァ様は、パールヴァティー様に求婚して、こうして二人はめでたく結ばれたってわけよ。
でも、話はまだ終わらねぇぜ。シヴァ様とパールヴァティー様は仲睦まじい夫婦になったんだが、その後何百年間もずっと交合を続けたままだったんだ。これでは子供がいつになっても生まれない。しかもその交合の振動で地球がゆっさゆっさ揺れて人々も神々も困り果ててしまってたんだ。そこでアグニという神様がシヴァ様のもとへ行って、交合をちょっと止めてくれないか頼みに行ったんだ。シヴァ様は了承すると、やっとのことでパールヴァティー様から離れたんだが、そのときシヴァ様の精液がこぼれ出たから、アグニ様はその精液を持って帰ることにしたんだ。でも、その精子は運んでいる内にどんどん重くなったから、アグニ様は仕方なくガンジス河の中にその精子を落としたんだ。そのガンジス河から生まれたのが、軍神カールッティケーヤ様さ。今、ムルガンの街を治めている方だ。ムルガンとはカールッティケーヤ様の別名だ。カールッティケーヤ様は悪魔ターラカを殺して世界に平和をもたらしたのさ。
そうそう、まだ話は終わっちゃいねぇ。シヴァ様の第三の眼に焼き殺されたカーマ様のことだけどよぉ、身体はなくなっちゃったけど愛の神の仕事は相変わらず続けてるんだ。カーマ様の身体が見える頃は、恋をするときは必ずカーマ様が近くにいたからすぐに分かったんだが、今じゃカーマ様は目に見えないからなぁ。知らない間にカーマ様の矢を射掛けられて恋に陥っちゃうのさ。恋ってのはいつの間にか心に生じるだろ? |