Holy India Empire
神聖インド帝国シヴァの街>住民と話す
  住民と話す Shiva City








 おお、あなたも旅のお方ですか。私も旅の者でしてな、マナサー様に会いに来たのじゃ。マナサー様はほれ、シヴァの街の西の端に住んでおられる。私は見てのとおり旅の行商。砂漠を越えて商いをする者でな、何が怖いかというと、砂嵐も怖いが、やはり毒ヘビなんかの毒を持った生き物なんじゃよ。マナサー様は毒ヘビやサソリから守ってくださる女神様じゃ。私が信仰する理由も分かるじゃろう?
 そういえば、私の祖先から代々伝わるこんな話がある。マナサー様とチャンドという商人の話じゃがな、あまりマナサー様の信者としては首を傾げたくなるような話なんじゃが、聞いていくがえぇ。

 
マナサーとチャンドの話
 昔チャンドという裕福な商人がおった。チャンドはシヴァ様を信仰しておってな、そのあまりの熱心さにシヴァ様から魔法の力を授かっておったのじゃ。それを見ていたマナサー様はチャンドに「私を崇拝しろ」と命令したが、チャンドはきっぱりと断り、シヴァ様を崇拝し続けたんじゃ。

 そこでマナサー様は腹いせにチャンドが大事にしていた庭を破壊してしまったのじゃ。しかしチャンドはシヴァ様から授かった魔法で庭を元通りにしたんじゃ。今度はマナサー様は美しい乙女に化けて、チャンドに向かってこう言ったんじゃ。「あなたの魔法の力を譲ってくれたら結婚して上げましょう。」チャンドはその乙女の言う通りにしてしまったのじゃが、魔法の力を譲られたマナサーはたちまち正体を現し、再び「私を崇拝しろ」と要求したんじゃ。しかしチャンドはやはり拒否したんじゃ。なんか子供の喧嘩みたいじゃが、我慢して聞いとくれ。

 なかなか折れないチャンドに、マナサー様はさらに嫌がらせをしたんじゃ。まず、チャンドの6人の息子を噛んで殺してしまったんじゃ。次にチャンドの全財産を乗せた船を転覆させてしまい、チャンドを家から遠く離れた場所にほっぽり出してしまったんじゃ。それだけでなく、マナサー様は必死で家に帰ろうとするチャンドに多くの苦難を浴びせ掛け、飢餓に追い込んだんじゃが、チャンドも決して降伏することはなかったんじゃ。

 やっとの思いで家に辿り着いたチャンドは、生活の再建に取り掛かり、やがて一人の息子が生まれたんじゃ。その子はラクシュミンドラと名付けられたんじゃ。しばらくの間、マナサー様の迫害は小休止状態だったんじゃが、ラクシュミンドラが成人してベフラという娘と婚約すると、マナサー様は不吉な予言をしたんじゃ。「ラクシュミンドラは結婚式の夜、ヘビに噛まれて死ぬだろう」と。

 チャンドはラクシュミンドラを殺させてなるものかと、有名な建築家に全体を硬い金属で作った家を建てさせ、ラクシュミンドラとベフラが住めるように内装を整えたんじゃ。しかしマナサー様は建築家を脅して、壁に小さな割れ目を残させたんじゃ。結婚式の夜、チャンドはラクシュミンドラの家の戸に頑丈な鍵をつけてロックしたんじゃが、そんな用心は何の役にも立たんかった。その割れ目からヘビが次々にラクシュミンドラの家に入ってきたんじゃ。ベフラはそれに気付いて何とかヘビを一匹ずつ殺していったんじゃが、やがて疲れて眠ってしもうた。とうとうヘビはラクシュミンドラを見つけて噛み、こうして予言は成就してしまったんじゃ。

 翌朝、ベフラはヘビに噛まれて死んだ夫の死体を見つけ、死体と共にイカダに乗って河の下流に向かったんじゃ。どこかの医者に命を復活させてもらうように頼むためじゃ。ヘビに噛まれて死んだ死体には命がしばらくの間宿っていると考えられていたからじゃな。ベフラは6ヶ月間イカダで河を下っていき、ある洗濯女に出会ったのじゃ。その洗濯女は殺してしまった自分の息子に水をかけて生き返らせたことがあったんじゃ。ベフラは洗濯女に、夫を生き返らせてほしいと頼んだんじゃが、洗濯女はラクシュミンドラをマナサー様のところへ連れて行っただけじゃった。

 そこでベフラはマナサー様に頼んだんじゃ。「どうか夫を生き返らせてください」とな。それに対してマナサー様はこう答えたんじゃ。「チャンドが自分を崇拝することを承諾したら、ラクシュミンドラを生き返らせてやろう。」ベフラはチャンドの家に行くと、チャンドに向かってマナサー様を崇拝するように必死で頼んだんじゃ。ベフラの説得にとうとう強情なチャンドも折れて、マナサー様を崇拝することにしたんじゃ。こうしてラクシュミンドラも生き返り、結局チャンドは損ばかりをしたというワケじゃな。う〜む、神様には逆らわない方がいいのぉ。

 実はこのチャンドが私の祖先なんじゃ。それ以来私の家系はマナサー様を崇拝し続けているというワケじゃよ。

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