僕はクリシュナという名前です。みんながそう名付けてくれました。でも本当はヴィシュヌという神様なのです。でも、せっかく名前を付けてくれたので、クリシュナという名前で生きようと思いました。この日記は、僕がクリシュナとして生まれるちょっと前から、カンサ王を退治するまで付けていた日記です。
○月×日
今日もいい天気でした。僕は竜のアナンタの上に寝転んで気持ちよく寝ていました。でも、誰かがやって来て言いました。「地上にカンサという王が現れて暴虐の限りを尽くしています。カンサは魔人がマトゥラー国の王ウグラセーナの妻を孕ませて生ませた子で、生まれながらにして残虐な性格を持ち、多くの神々や人間を困窮させています。どうか助けてください。」だって。地上で困ったことが起こると、僕の出番がやって来ます。そろそろ僕が地上に行って、悪人をやっつけて、正義と悪のバランスを保つときが来たようです。僕はアナンタと相談して、なんとかすることにしました。
○月×日
アナンタと僕は、ヴァスデーヴァという人の息子として生まれることにしました。でも、カンサは僕たちが地上へ降りて自分を殺しに来ることを誰かから聞いて察知しちゃったみたいで、ヴァスデーヴァと奥さんのデーヴァキーを牢屋に閉じ込めて、生まれてくる子供を次から次へと殺し始めました。何とかしてカンサ王の目をごまかして生まれなければなりません。そこで、まずはアナンタが地上へ降臨しました。アナンタはデーヴァキーのお腹の中から出る前に、他の女の人のお腹にワープして、上手く生まれることに成功しました。本当によかったと思いました。アナンタはゴークラという遊牧民の村の、ローヒニーという人の息子として生まれて、バララーマと名付けられました。
○月×日
今度は僕が地上に生まれることになりました。僕もカンサに殺されないように作戦を立てました。僕の友達のマーヤーという女神に頼んで、マーヤーにも地上に生まれるようにしてもらいました。マーヤーはとっても幻術のうまい人です。マーヤーはヤショーダーという女の人のお腹の中に入りました。僕はデーヴァキーのお腹の中に入りました。
○月×日
ついに僕が生まれました。目立たないように、真夜中の真っ暗闇の中に、真っ黒な肌をして生まれました。僕は魔法を使って牢屋の門番を眠らせました。これでひとまず大丈夫です。僕はお父さんになったヴァスデーヴァに「ヤショーダーという人のところへ連れて行って」と頼みました。今ごろマーヤーもちょうど生まれているはずです。ヴァスデーヴァは僕を連れて牢屋からこっそり抜け出して、ヤショーダーのいるゴークラ村へ急ぎました。途中、川を渡ったりして大変でした。でも、何とかしてヤショーダーのところに辿り着きました。ヤショーダーはゴークラ村のリーダーのナンダという人の奥さんでした。マーヤーはちゃんと生まれていました。僕はヤショーダーの娘と交換してもらいました。ヴァスデーヴァは僕の代わりにマーヤーを連れて牢屋に戻りました。牢屋に戻ると、子供が生まれたと知ったカンサ王がやってきました。カンサ王はマーヤーを取り上げて殺そうとしましたが、その瞬間マーヤーは女神の姿になって、消えてしまいました。みんなびっくりしていたそうです。
○月×日
大変なことが起こりました。カンサ王は、僕が生まれてどこかで生きていることを知って、国内の全ての村や町にいる子供たちを皆殺しにすることにしたのです。そして手下の悪魔をあちこちに派遣して、子供を殺し始めました。やがてはこのゴークラ村にもやって来るかもしれません。
○月×日
遂にカンサ王の手下の悪魔がゴークラ村にやって来ました。プータナーという悪魔の女です。プータナーは美女に変身してやって来ましたので、誰も彼女が悪魔だとは思いませんでした。そしてプータナーは僕を見つけました。僕はそのときベッドの上で横になっていて、プータナーが来たのを知っていましたが、寝たふりをしていました。プータナーは自分のおっぱいを僕に無理矢理飲ませようとしました。実はプータナーのおっぱいには猛毒が塗ってあったのです。しかし、そんな毒は僕には効きません。僕はものすごい勢いで吸い付いて、プータナーの命も一緒に吸い込んでしまいました。プータナーはたちまち正体を現して死んでしまいました。
○月×日
今日は僕の1歳の誕生日の日でした。お母さんのヤショーダーはお祝いの準備をしていました。僕は馬車の下に寝かされていました。でも、僕はおっぱいを飲みたくなりました。僕はお母さんを呼んでみましたが、なかなか来ません。大声で泣き叫んでみましたが、それでも来ません。僕は足をばたばたさせて馬車を蹴飛ばしてしまいました。みんなびっくりしていました。
○月×日
今日も僕はお母さんのおっぱいを飲んでいました。すると、お母さんは急にどこかへ行ってしまいました。火にかけていたミルクは煮こぼれてしまっていたのです。でも、僕はせっかくのおっぱいタイムが急に終わってしまって怒ってしまい、石を投げてバターの入った壺を壊してしまいました。そしてこぼれたバターを拾い集めてなめはじめました。そして今度はヨーグルトの入った壺を見つけてヨーグルトを食べ始めました。お母さんが戻ってくると、「何やってるの!?」って怒り始めました。僕は恐くなって逃げました。でも、お母さんは棒を持って追いかけてきます。そしてとうとう捕まってしまいました。
お母さんは僕を棒で叩こうとしましたが、でも優しいので叩くのはやめてくれました。代わりに、ロープで僕を木臼に縛り付けようとしました。でも、ロープが短くて僕を縛れませんでした。お母さんは他のロープを付け足しましたが、それでもまだ長さが足りません。どんどん継ぎ足しているうちに、家中のロープがなくなってしまいました。それでも僕を縛ることができません。神様を縛ることは誰にもできないのです。
でも、僕は一生懸命僕を縛ろうとしているお母さんが可哀想になってきました。そして、自分で縛られてあげました。こうして、お母さんは安心して家の仕事をすることができるようになりました。でも、やっぱり僕は縛られたままでは動けないので退屈です。しばらくしてから、僕は臼を引きずって歩き始めました。そして2本の木の間を通り抜けようとしたら、臼が木の間に挟まってしまいました。でも、僕が力いっぱい引っ張ったので、木が抜けてしまいました。すると、木から2人の神様が現れました。なんと、その木は呪いで木に変えられてしまった神様だったのです。僕が木を引っこ抜いたことによって、その呪いが解けたみたいでした。2人の神様は僕にありがとうって言って、空に昇っていきました。結局お父さんが僕のロープをほどいてくれました。
○月×日
僕の大好物はバターです。お兄ちゃんのバララーマもバターが大好きです。お母さんは何とかしてバターを僕から隠そうとしますが、僕たちはすぐに見つけて食べてしまいます。今日は、高いところに吊るしてあったバターの壺を、お兄ちゃんと協力してとって、食べました。おいしかったです。
○月×日
また悪魔がやって来ました。トリナーヴァルタという悪魔です。トリナーヴァルタは風になってやって来て、埃を巻き上げてみんなの目を見えなくしました。そして僕を連れさらって飛んで行きました。でも、僕は自分で自分の体重をどんどん重くしました。トリナーヴァルタは僕の重さに堪えられなくなって、僕を放そうとしましたが、僕がしっかりしがみついていたので、離れませんでした。そしてついにトリナーヴァルタは墜落して死んでしまいました。もちろん僕はかすり傷ひとつありませんでした。
○月×日
僕はお母さんのおっぱいを飲んでご機嫌になっていました。お母さんは僕をなでなでしてくれました。お腹がいっぱいになったので、僕はついつい眠くなってあくびをしてしまいました。僕はもともと神様なので、体の中には宇宙が詰まっているのです。お母さんは僕の体の中の宇宙を見てしまったようでした。びっくりしていましたが、すぐに僕が口を閉じたので、多分気のせいだと思ったと思います。
○月×日
今日はお兄ちゃんのバララーマや他の友達と遊んでいました。僕はふざけて泥の団子を食べてしまいました。驚いたみんなが、お母さんのところに僕が泥を食べたことを言いに行きました。お母さんは怒って僕に口を開けて泥を吐き出すように言いました。僕は口を開けさせられてしまって、また僕の体の中にある宇宙を見られてしまいました。お母さんはまたまたびっくりしていました。僕は魔法を使って、なんとかお母さんの記憶からこのことを消し去ってしまいました。あぶない、あぶない。
○月×日
お父さんのナンダのところに、他の牛飼いの人たちがやってきて、変な質問をしました。「ナンダとヤショーダーの肌は白いのに、なんでクリシュナは黒いんだ?本当にお前達の子供なのか?」お父さんたちが答えるのに困っていたので、僕が代わりに答えてあげました。「僕は真夜中に生まれたから、夜の黒さが染み付いちゃって、黒くなっちゃったんだよ。」みんな何とか納得してくれたみたいです。
○月×日
今日は家に果物売りのおばさんがやって来ました。僕は自分の欲しい果物を選びました。お母さんは、僕に「このおばさんに何かあげなさい」と言いました。僕は家の中からお米を持ってきて、おばさんのかごの中に入れてあげました。おばさんはその後、家に帰ってかごの中を見て驚いたそうです。かごの中のお米が宝石に変わっていたからです。ちょっと悪戯しちゃいました。
○月×日
今日はお引越しの日です。ゴークラの村からヴリンダーヴァナの森へ引っ越すことになりました。僕たちは遊牧生活をしているのです。ヤムナー河という大きな河の近くにあって、とてもいいところです。
○月×日
今日はとってもいいことがありました。一人の男の子に会ったのです。その男の子はとっても横笛がうまくて、僕はついついうっとりしてしまいました。そして、僕にも横笛の吹き方を教えてくれました。家に帰ると早速お母さんに横笛をおねだりしました。そしたらお母さんが横笛を買ってくれました。僕が吹いてみると、みんな感心してるみたいでした。
○月×日
僕は早速森の中へ行って横笛を吹いて遊びました。すると、僕の横笛のメロディーに合わせて、孔雀が踊りだしました。僕は嬉しくなってもっと吹きました。でも疲れてしまいました。僕が笛を吹くのをやめると、孔雀はどこかに去っていこうとしました。僕は孔雀の後について行ってみました。すると、隣のバルサーナ村まで来てしまいました。そして孔雀は大きな家の中に入っていきました。僕がまた横笛を吹くと、孔雀はまた踊りだしました。すると、きれいな女の子が水の入った壺を頭にのせてやって来ました。僕はその女の子があまりにかわいかったので、横笛を吹くのを忘れてしまいました。女の子は僕を見るとビックリしちゃって、壺を落としてしまいました。そして家の中に入ってしまいました。その女の子に名前だけでも教えてって言いました。女の子は「ラーディカ」と答えました。ラーディカちゃんか!僕は、こんなにかわいい女の子を紹介してくれた孔雀に感謝するために、孔雀の羽をいつも頭につけておくことにしました。
○月×日
僕とお兄ちゃんのバララーマは、子牛たちを散歩させていました。すると、見知らぬ子牛が紛れ込んでいることに気付きました。僕はすぐにそれが悪魔の変身した姿だと見抜きました。そして気付かないふりをしてその子牛に近付いて、尻尾をつかんで放り投げました。子牛に変身した悪魔は木にぶつかって死んでしまいました。
○月×日
今日も僕とお兄ちゃんは子牛の散歩をさせていました。池のほとりで子牛に水を飲ませて休んでいると、バカという悪魔が鳥に化けてやってきて、僕を飲み込んでしまいました。しかし僕は体を火のように熱くしたので、バカは喉が焼けてしまって、僕を吐き出しました。僕はバカのクチバシをつかんで真っ二つに引き裂いてしまいました。
○月×日
今度はアガという悪魔がやって来ました。アガは山のように大きな蛇の姿をしていて、大きな口を開いていたので、僕たち牛飼いの子は洞窟だと思って、子牛と一緒に中に入っていきました。ところが、僕はこれが悪魔の身体の中だと気付いたので、身体を大きくしてアガの喉をふさいでしまい、窒息死させてしまいました。僕たちは無事にアガの身体の中から出てきました。
その後、僕たちは河岸でお昼ご飯を食べていました。子牛たちも自由にさせていたのですが、気付いたらどこかにいなくなってしまっていました。牛飼いの子たちが探しに行こうとしましたが、僕が止めて、僕一人で探しに行きました。でも、どこにも子牛はいませんでした。そして河岸に戻ってくると、牛飼いの子たちまでいなくなってしまいました。また悪魔の仕業かと思いましたが、悪魔にしては巧妙すぎると思いました。そこで、僕は神通力で見てみると、どうもブラフマー神の悪戯だということが分かりました。僕はブラフマー神を逆にからかってやるために、僕を分裂させて、牛飼いの子と子牛をそっくりそのまま作り出しました。そして何事もなかったかのように家に帰りました。僕の分身である牛飼いの子たちも、それぞれの家に帰りましたが、誰も僕の分身だとは気付きませんでした。僕の分身である子牛たちも母牛のもとに帰りましたが、誰もそれが偽物であることに気付きませんでした。
○月×日
今日もいつも通り僕は牛飼いの子たちと子牛を連れて河岸へ行きました。ブラフマー神は、牛飼いの子と子牛がいるのを見てビックリしました。そして、僕のすごさが分かったみたいで、僕に謝りました。そして牛飼いの子と子牛を返してくれました。牛飼いの子も子牛もずっと眠らされていたので、何が起こったか分かりませんでした。僕はそのことは秘密にしておきました。
○月×日
僕の家の近くに、ターラーヴァナという森があります。ターラーヴァナの森にはデーヌカという悪魔が住んでいて、誰もこの森に入ろうとしませんでした。でも、その森からは果物のいい匂いがするのです。僕とお兄ちゃんは、他の牛飼いの子も連れて、ターラーヴァナの森へ入っていきました。そしたら、やっぱりその森は果物がいっぱいありました。僕たちは木を揺さぶって果物を落として拾って食べていました。すると、その音を聞きつけたデーヌカがやって来て、お兄ちゃんを蹴ろうとしました。お兄ちゃんのバララーマはデーヌカの足をつかむと、放り投げました。そしてもう一回デーヌカをつかんで、辺りを引きずりまわしました。デーヌカは死んでしまいました。やったね、お兄ちゃん!デーヌカが死ぬと、デーヌカの家族もやって来て、僕たちを襲ってきましたが、僕たちは一匹ずつ捕まえて木の放り投げて殺しました。おかげでターラーヴァナの森は平和になり、みんな果物をとりに行けるようになりました。
○月×日
最近、本当に悪魔がたくさんやって来ます。カンサはまだ諦めずに僕を殺そうとしているのです。今日は、お兄ちゃんが大活躍をしました。僕とお兄ちゃんと、他の3人の牛飼いの子で遊んでいると、一人の男の子が「一緒に遊ぼう」と言ってやってきました。そこで、僕たちはゲームをしました。3人ずつに分かれて勝負をして、負けた方が勝った人をおんぶして家まで帰らなければならないのです。僕のクリシュナ・チームと、お兄ちゃんのバララーマ・チームに分かれてゲームをしました。新しく友達になった子は僕のチームに入りました。でも、僕たちのチームは負けてしまいました。そこで、僕たちはバララーマ・チームの子たちをおんぶしましたが、その男の子は僕のお兄ちゃんをおんぶしたのです。
ところが、僕たちが家に向かって帰ろうとすると、その男の子はお兄ちゃんを乗せたまま違う方へ行ってしまいました。僕たちが追いかけると、なんとその男の子は正体を現しました。なんと悪魔プラランバだったのです。プラランバはお兄ちゃんをおんぶしたまま連れ去ろうとしました。しかしお兄ちゃんは、ゲンコツで悪魔を頭を叩いて、プラランバを殺してしまいました。僕たちはほっとしました。
○月×日
最近、ヤムナー河がおかしいのです。ヤムナー河の水を飲んだ動物たちがみんな死んでしまうのです。僕はきっと悪魔の仕業に違いないと思います。
○月×日
ヤムナー河の異常の原因がわかりました。カーリヤという竜がヤムナー河に住み着いていて、毒を辺りに撒き散らしているのです。僕はヤムナー河の中に飛び込みました。すると、案の定カーリヤ竜が僕に巻きついてきました。でも僕はそんなのへっちゃらです。僕は体をどんどん大きくしていきました。とうとうカーリヤ竜は耐え切れなくなって僕を放しました。カーリヤ竜は今度は僕に毒を吹きかけようとして来ました。僕はひらりとかわすと、カーリヤ竜の頭の上で踊りを踊り始めました。カーリヤ竜は重さに耐え切れなくなって血を吐いて気絶してしまいました。すると、カーリヤ竜の奥さんがやって来て命乞いをしたので、命だけは助けてやることにしました。その代わり、ヤムナー河から立ち去ってもらいました。これで一件落着です。
○月×日
ある日、僕がヤムナー河の岸辺を歩いていると、ゴーピー(牛飼いの女の子)たちが河の中で素っ裸で遊んでいるのを見つけました。女の子がこんな外で裸になるなんて、決して許されないことです。僕は女の子たちをこらしめるために、岸辺に脱ぎ捨ててあった服を盗んで木の上の登りました。やがて、ゴーピーたちは自分の服がないことに気付きました。そして、僕が服を持って木の上にいることにも気付きました。女の子たちは、「服を返して」と言いました。僕は、「君たちは素っ裸で水浴びして神様を冒涜したんだ。一人ずつ木の下まで来て謝らなきゃ返してあげないよ。」と言ってやりました。ゴーピーたちは最初、恥かしがって水から出てきませんでしたが、やがて一人ずつ出てきて、神様に謝りました。僕は可哀想になったので、服を返してあげました。
○月×日
僕とお兄ちゃんは今日、森の中でゴーピーの女の子たちと一緒に踊ったり歌ったりして遊んでいました。すると、シャーンカという悪魔がやって来て、ゴーピーたちを連れ去って行きました。ゴーピーたちは「助けて〜!」と悲鳴をあげました。僕とお兄ちゃんは急いでシャーンカを追いかけました。シャーンカは僕たちから逃げ切れないと思ったのか、ゴーピーたちを置いて逃げ出しました。僕はゴーピーの世話をお兄ちゃんに任せて、シャーンカを追いかけました。そしてシャーンカを捕まえると、叩いて殺してしまいました。全く、女の子に手を出すなんて、とんでもない悪魔だと思いました。
○月×日
今日も僕とお兄ちゃんと友達で森の中で遊びました。お昼になりましたが、今日は食べ物を持ってくるのを忘れてしまいました。僕は近くで儀式をしていたバラモンさんたちに食べ物を分けてくれるように、友達を頼みに行かせましたが、バラモンさんたちは断ってきました。そこで、今度は友達をバラモンの奥さんたちのところへ送って頼んでみたら、食べ物をくれただけでなく、僕たちのいるところまで持ってきてくれました。なんて親切な人たちだろうって思いました。でもそのおばさんたちは、夫に許可なく来てしまったから家に帰れないと言いました。僕は食べ物をくれたお礼に、おばさんたちがずっと夫に愛され続けるようにしてあげました。おばさんたちは喜んで帰っていきました。
そういえば、バラモンたちは僕がヴィシュヌ神の化身だったってことに気がつくと、僕に食べ物をあげなかったことを後悔したみたいだよ。今更遅いんだけどね。
○月×日
またカンサ王の手下の悪魔がやって来ました。ケーシーという名前です。ケーシーは馬の姿になって、ヴリンダーヴァナの森を荒らしまわりました。僕は我慢できなくなったので、馬の前に立ちふさがりました。ケーシーは僕に突進して来て、足で僕を踏み潰そうとしましたが、僕は足を掴むと遠くへ放り投げました。ケーシーはそれでもめげずに立ち上がると、今度は大きな口を開けて僕に突進して来ました。僕の飲み込もうとしたのでしょう。しかし、僕はケーシーの口に左手を突っ込むと、その手を一気に膨らませました。ケーシーは窒息して死んでしまいました。
○月×日
今日、僕は友達と一緒に警察と泥棒ゲームをしました。警察になった人が泥棒になった人を捕まえるのです。僕たちは楽しく遊んでいました。ところが、段々と遊んでいる子たちの数が減っていっていることに気がつきました。よく見ると、その代わりに見たことがない子がゲームに入っています。僕はその子が実は悪魔であることを見抜きました。その悪魔はゲームに紛れ込んで子供たちをさらって、洞窟の中に閉じ込めていました。僕はその悪魔を捕まえました。しかし悪魔は身体を大きくして逃げようとしました。僕は悪魔を地面に叩きつけて殺しました。そして洞窟に閉じ込められた子たちを助けてあげました。
○月×日
今日もまた悪魔がやって来ました。アリスターという悪魔で、大きな牛の姿をして鋭い角を持っていて僕たちの村の中を荒らしまわりました。僕がアリスターの前に立つと、アリスターは僕に向かって突進してきたので、僕は角を持って遠くへ放り投げました。まだ突進してくるので、今度は角を捕まえるとアリスターの首をひねって殺してしまいました。もうそろそろ悪魔退治も飽きてきちゃったなぁ。だって、みんなワンパターンなんだもん。
○月×日
今日は友達とゲームをして遊びました。遊んでいる内に、子牛たちが森の奥の方へ行ってしまいました。そして運悪く火事が発生してしまったのです。子牛たちは火に囲まれて鳴きました。僕たちはすぐに駆けつけましたが、僕たちも火に囲まれてしまっていることに気がつきました。みんなもうダメだ、と思って泣いてしまったので、僕は火を全部食べて助けてあげました。
○月×日
今日の朝は大事件が起きました。朝起きたらお父さんがいなくなっていたのです。僕とバララーマはあちこちを探してまわりました。そしてヴァルナ神のところへ行ってみると、お父さんが捕まえられていました。お父さんは間違った時間の沐浴してしまったために捕まってしまったそうです。僕がヴァルナ神に頼むと、お父さんを解放してくれました。
○月×日
今日は犠牲祭の日でした。お父さんもお母さんも村の人たちも、インドラ神に捧げる供養物の準備にとても忙しそうでした。でも、僕はなぜみんながインドラ神を崇拝するのか分かりませんでした。そこでお父さんにその理由を聞いてみました。お父さんは、「雨を降らしてくれるからインドラ神を祀っているんだ」って言いました。でも、僕は納得できませんでいた。だからお父さんにこう言いました。「僕たちは森と山のおかげで生活してるんだよ。だから牝牛とバラモン様とゴーヴァルダナ山を敬って犠牲祭をしようよ。」
お父さんは僕の意見を聞いてくれて、早速インドラ神への犠牲祭を中止しました。そしたらインドラ神が怒って、雲の呼んでヴリンダーヴァナ村に大雨を降らして来ました。やがて村は大洪水になってしまいました。僕は村人を助けるため、ゴーヴァルダナ山を持ち上げて、左手の小指の上に山の乗せて傘の代わりにしました。7日間雨は降りつづけましたが、村には何の被害も出ませんでした。インドラ神はやっと諦めて僕に謝り、雨を降らすのを止めました。僕はゴーヴァルダナ山を元の位置に戻しました。
○月×日
今日はシヴァラートリーの日です。お父さんは他のおじさんたちと一緒にアンビカーヴァナというところへ行って、サラスヴァティー河の岸で断食をしていたそうです。するとそこへ大蛇が現れてお父さんたちを飲み込もうとしました。お父さんは僕に助けを求めたので、僕は急いでアンビカーヴァナに駆けつけて、大蛇を足で踏みつけました。すると、なんと大蛇はヴィディヤーダラという天使の姿になりました。そのヴィディヤーダラは、昔身体の曲がった聖仙を笑ってしまい、呪われて大蛇の姿になってしまったのだそうです。とにかく、お父さんもヴィディヤーダラも助かってよかったと思います。
○月×日
今日は満月の夜でした。僕は森の中で笛を吹きました。すると、ゴーピーたちが笛の音に誘われてやって来ました。僕はゴーピーたちをからかうためにわざと冷たいことを言いました。「女の子がこんな時間に外を歩いちゃダメじゃないか。森には危険な動物がうろついてるんだよ。それに女の子は夫や親類以外の男性と遊んじゃいけないんだよ。さぁ、早く帰りなさい。」すると、ゴーピーたちは泣き出してしまって、「どうしてあなたはそんなに冷たくするの?私はただ最愛の人に抱かれたいだけなのに!」って言いました。いやぁ、もてる男はつらいなぁ。僕は仕方がないから、ゴーピーたちと一緒に踊ったりして遊んであげました。ところが、ゴーピーたちは「私たちこそが宇宙で最高に幸せな女性だ」なんて傲慢なことを言い出したから、また悪戯してやろうと思って、僕は急に姿を消したのです。
ゴーピーたちは必死で僕を探しましたが、僕を見つけることはできませんでした。でも、ゴーピーの中で一人だけ傲慢にならなかった娘がいました。ラーダーという女の子で、僕のお気に入りの娘です。僕はラーダーだけをこっそりと連れ出して森の奥へ入っていきました。僕は花を摘んで、ラーダーの髪に飾ってあげました。森の中を散歩していると、ラーダーが疲れて歩けないと言い出しました。僕はラーダーを肩に担いであげました。しかし、ラーダーはこのとき、他のゴーピーたちとは違って、自分だけが僕と一緒に
いることをちょっと自慢に思い始めました。僕はラーダーもこらしめてやるために、ラーダーが木の枝に掴まった瞬間に姿を消してしまいました。ラーダーは枝にぶら下がったままになってしまいました。そこへ他のゴーピーたちもやって来て、ラーダーを助けてあげました。ゴーピーたちは探すのを諦めて、河岸で僕を賛美する歌を歌い始めました。僕はとうとうみんなの前に姿を現してあげました。
僕たちは再びダンスを始めました。僕は分身をたくさん作って、それぞれの女の子と一緒に踊りました。みんな僕と一緒に踊っていると思って幸せな気分になっていました。踊りつかれると、今度はヤムナー河で水遊びをしました。そして岸に上がってみんなで散歩しました。こうして夜通しで僕たちは遊んだのです。明け方になってゴーピーたちは帰っていきましたが、僕の魔法のお陰で誰にも夜遊びしただなんてばれずに済みました。
○月×日
今日はカンサ王の住むマトゥラーからアクルーラという使者が村にやって来ました。マトゥラーの都で弓供養の儀式が行われるので、お父さんや僕やバララーマも来て欲しいとのことでした。でも、アクルーラは僕にこっそり教えてくれました。この儀式は実は僕とバララーマを呼び寄せて殺そうとする計略だったのです。しかも、僕の本当の親であるヴァスデーヴァとデーヴァキーがまだ牢屋に閉じ込められていることも知りました。僕はカンサ王をやっつけてお父さんとお母さんを救うためにマトゥラーへ行くことにしました。
お父さんは一足先にカンサ王への贈り物を持て都に出発しました。アクルーラは僕とバララーマを連れて村を出ようとしましたが、ゴーピーたちが馬車の前を遮りました。僕と別れるのが辛かったのです。僕は必ず帰ってくるよって約束してどいてもらいました。馬車がしばらく進むと、木の下にラーディカが座っているのが見えました。昔、孔雀に紹介してもらった女の子です。僕はラーディカに横笛をあげました。ラーディカは「もう笛を吹かないの?」って聞きました。僕は「笛を吹くのはヴィリンダーヴァナだけさ。これからは武器を持って戦わなくちゃいけない」と言って別れを告げました。
○月×日
マトゥラーに着きました。お父さんはもう既に着いていて、街の近くの森でキャンプしていました。僕たちはお父さんと一緒になりました。アクルーラはカンサ王に僕たちが到着したことを報告しに行きました。
○月×日
今日はマトゥラーの都をあちこち見て回りました。そしたら、街の人がみんな僕を見るために集まってきて大騒ぎになりました。僕たちはまず染物屋に行って、服を借りようとしました。何しろ儀式に参加するので、立派な服を着なければなりません。でもその染物屋のおじさんは短気で、子供がそんな服を借りようとするなんて生意気だって言って僕たちを叩こうとしてきました。僕はそのおじさんを軽く叩き返して失神させました。僕たちは好きな服をとって着ました。でも、大人用の服だったので、僕たちには合いませんでした。今度は仕立て屋に行って、服を直してもらいました。そして花屋で花をもらってきれいに着飾りました。その後、僕たちは道端にせむしの女の人がいるのに気がつきました。その女の人は僕たちにティラク(額の印)をつけてくれました。僕はお礼に女の人のせむしを直してあげました。
○月×日
今日は弓供養の日です。僕とお兄ちゃんは会場に行きました。会場には大きな弓が置いてありました。観客の人たちが、「その弓に近付いたらダメだぞ!」って注意してくれたけど、僕はその弓を持ち上げて真っ二つに折ってしまいました。カンサ王は僕の力を見て恐くなってしまったみたいで、たくさんの悪魔をよこして僕たちを殺そうとしました。しかし、僕たちは折れた弓を片方ずつ持って悪魔たちを打ちのめしました。
○月×日
今日は都でレスリング大会が開かれることになり、僕とバララーマも招待されました。しかし、きっとこれもカンサ王の謀略に違いありません。競技場の入り口から中に入ろうとすると、早速カンサ王の手下である巨大な象が僕たちに向かって突進して来ました。僕はジャンプして象を飛び越えると、蹴り殺しました。僕とバララーマは象の牙を一本ずつ持って競技場の中に入っていきました。
競技場の中に入ると、カンサ王が玉座に座って僕たちをにらみつけていました。たくさんの観客がレスリングの競技を見るために集まっていました。僕たち兄弟は、チャーヌーラとムシュティカという2人の大男から挑戦を受けました。観客のみんなは、僕たちみたいな子供にそんな大男と戦わせるなんて卑怯だ、と言いましたが、僕たちは挑戦を受け入れました。僕はチャーヌーラと、バララーマはムシュティカと戦うことになりましたが、簡単にやっつけてしまいました。すると今度はクータというレスラーが挑戦して来ました。クータはお兄ちゃんが殺しました。その後もサーラやトーサラといったレスラーが挑戦してきましたが、僕たちは簡単にこいつらを殺してしまいました。すると、他のレスラーたちは恐くなって逃げ始めました。
するとカンサ王は、手下たちにお父さんのナンダと、本当の両親のヴァスデーヴァ、デーヴァキーを殺すように命令しました。僕はそんなことはさせてなるものかと、カンサ王の玉座まで飛び上がりました。カンサ王は剣で僕と戦おうとしましたが、僕の敵ではありませんでした。僕はカンサ王の上に飛び乗って殺しました。
僕は捕まっていたヴァスデーヴァーとデーヴァキーを救い出して、マトゥラーの都を悪王カンサから解放しました。そしてナンダ父さんと一緒にヴリンダーヴァナの村へ帰りました。 |