昔、神々と悪魔の間で戦争がありました。私は悪魔側に味方していまして、死人を生き返らす秘術を使って死んだ悪魔を次々と蘇生させていましたから、悪魔軍の方が圧倒的に有利となりました。
そんなとき、私の元に一人の青年がやって来ました。その青年はカチャという名でして、私に弟子入りすることになりました。カチャは熱心に私に仕えてくれました。そしてやがて私の娘であるデーヴァヤーニーと恋仲となったのです。
しかし、悪魔たちは私がカチャを弟子としたことに不満でした。カチャが私の秘術を盗んで神々に教えることを恐れたのです。そしてとうとう悪魔たちは、外に出掛けていたカチャを殺してしまったのです。
デーヴァヤーニーは私に「カチャを生き返らして」と嘆願しました。どうして可愛い娘の願いを拒絶できましょうか?私はカチャを生き返らせました。ところが、生き返ったカチャを見た悪魔たちはまたしても隙を見てカチャを殺してしまいました。私も再びカチャを生き返らせましたが、悪魔たちの横暴を止めることはできず、カチャはまたもや殺されてしまいました。
またカチャが殺されたことを知ったデーヴァヤーニーは私にカチャを生き返らせるのように哀願しました。何度生き返らせてもカチャは殺されてしまうので、私はあきらめるように娘を説得しましたが、カチャが死んだら自分も死ぬと言って断食を始めたのです。私は仕方なくカチャを生き返らせました。すると、驚いたことに私の身体の中からカチャの声がしたのです。どうやらカチャを殺した悪魔たちは、死体を燃やして灰にし、酒の中に混ぜて私に飲ませたようなのです。だからカチャは私の身体の中で生き返ることになってしまったのです。
カチャが助かるには私の腹を切り裂いて出て来なければなりません。しかし私は死んでしまう。そうなればデーヴァヤーニーを悲しませてしまいます。カチャを助け、私も助かる方法はひとつしかありませんでした。私が腹の中にいるカチャに蘇生の秘術を教えた後、私の腹を切り裂いて外に出て、死んだ私をカチャが生き返らせるのです。私はカチャに秘術を教え、外に出たカチャは私を生き返らせてくれました。
ところが、カチャはやはり私のその秘密の呪文を得ることが目的で私に弟子入りしてきたのでした。実はカチャは木星ブリハスパティの息子で、神々から私の秘術を盗んで来るように遣わされたスパイだったのです。秘術を得たカチャは、デーヴァヤーニーの求婚を退け、私の元を去ろうとしました。ところが、デーヴァヤーニーは怒り、カチャに呪いをかけて秘術を効力無きものにしてしまいました。カチャも同様にデーヴァヤーニーに呪いをかけ、こうして私の持っていた秘術は災いを招く結果となってしまったのです。芸は身を助けると言いますが、こんなこともあるのですね。 |