ヤマ様は、太陽神ヴィヴァスヴァット様とサラニヤー様の間に生まれた、世界で最初の人間なのだ。ヤマ様には双子の妹がおられて、その妹の名前はヤミーというらしい。だが、今ここには住んでおられない。
ヤマ様は物心がつくと、この世界がどうなっているのかを知りたくなって、ある日世界探索の旅に出られたのだ。いろんなところを旅して、とうとう「父祖の道」を発見なさったのだ。「父祖の道」とは「死の道」とも呼ばれるんだ。つまり、天国まで通じる道。ヤマ様はその道を通って、最初の死者となってしまったのだ。そしてそれ以後、人間は「父祖の道」を通って、必ず死ななければならない存在になってしまったんだ。
天国に辿り着いたヤマ様は、死者の国の王として君臨することになった。最初、ヤマ様の治める死者の国は楽園だった。天上のもっとも高いところにあって、人間は死ぬと皆この楽園に来て、祖先の霊と一体になって安楽に暮らしていたんだ。しかしヤマ様は次第に楽園に住む死者の霊を選ぶようになってきたんだ。死者の中にも乱暴者や変質者がいたのかもしれねぇな。ヤマ様は生前の行いによって死者が楽園に住むべきであるかどうかを判断するという決まりを作って、もし悪い奴が来たら地獄へ落とすようになさった。こうして、ヤマ様は死者を楽園に住まわせるか、地獄へ堕とすか、無にしてしまうか、それとも生者の世界へ戻して生まれ変わらせるかを決める神様になっていったんだ。
でも、そうこうしてるうちにヤマ様は、死者が来るのを待ってるだけじゃあ飽き足らなくなってきて、ご自分でも死者を捜しに生者の世界へ行かれるようにもなったのだ。ま、死者のスカウトを始めたわけだな。といっても、無理やり人を死なせるようなことはせずに、死ぬべき人間をきっちり死なす仕事をしに行くらしいぜ。最近、機械とか使って無理に生き長らえる人間が多いからなぁ。
だいたい俺の知ってることはこのくらいだ。ま、せいぜい地獄に落ちないように気をつけなよ。言っとくけど、地獄はここなんかよりもずっとおどろおどろしいぜ。 |